
根津美術館で尾形光琳(1658~1716)の「国宝・燕子花図屏風」を拝見し、庭園で雨上がりに今を盛りと咲いているカキツバタを楽しんでまいりました。
「燕子花図屏風」を見たのは初めてではないと思うのですが、咲いているカキツバタと同時に拝見するのは今回が初めてです。朝一の美術館に入り、まずは水際に咲くカキツバタを満喫。それから「燕子花図屏風」を拝見しました。このような順番で見ると「燕子花図屏風」がいかにデフォルメされて、デザイン性に優れているのかを実感することができました。六曲一双の屏風がどのようにつながり、レイアウトの面白さを感じずにはいられません。しかも、おそらく計算されたであろう幾何学的構図の美しさの中に、カキツバタのたおやかさが感じられ、見る者を魅了します。
前回のブログの中で、「花が時間を纏う」ことについてふれましたが、アヤメ科の花を生ける時には特に意識します。アヤメ科の植物の新しい葉は、御存知のように葉と葉の間から新しい葉が出てきます。私の最初の師匠であった祖母に「おばあさんの葉とお母さんの葉の間から娘の葉が出てきて、親子の葉の爪は向き合う」と教えてもらったことが昨日のことのように思い出されます。その一番新しい葉は、春浅い頃には、いまだ二枚の古い葉より低く生けますが、季節が進むとともに新しい葉は古い葉を追い越し成長し一番高くなりますので、高く生けます。このように爪の向きを考え、時とともに長さをも考えながら生ける心は「花は野にあるように」そのもののように思います。
根津美術館のカキツバタの新しい葉もすっかり成長し、伸びやかに育っておりました。
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